GLP-1受容体作動薬について
GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬です。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)はインクレチンというホルモンの一つで、消化管より糖や脂質が吸収される際に小腸から分泌されるホルモンです。インクレチンはGLP-1とGIPの2種が同定されています。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)について
食事摂取などが刺激となり、消化管から分泌されるホルモンの一つで、血糖値が高いときに、すい臓からインスリンを出すよう働きかけます。胃内容排出を遅らせ、食後の不適切な*グルカゴン(血糖を上げるホルモン)の放出抑制と食物摂取量を減らすなどいくつかのメカニズムを通じて作用します。下記薬剤は通常、他に低血糖を引き起こす治療法がない場合には低血糖を引き起こしません。GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の治療に使用されますが、1型糖尿病治療においては研究段階であり、保険適応ではありません。
*グルカゴンとは・・・膵α細胞より分泌され、肝臓でのグリコーゲン分解の促進/グリコーゲン合成の抑制、糖新生の促進などにより血糖値を上昇させるホルモン
GLP-1受容体作動薬 注射製剤
- ビクトーザ(リラグルチド)
- バイエッタ(エキセナチド)
- リキスミア(リキシセナチド)
- トルリシティ(デュラグルチド)
- オゼンピック(セマグルチド)
- マンジャロ(チルゼパチド)
GLP-1受容体作動薬 内服薬
- リベルサス(セマグルチド)
他にも持効型インスリンと合剤になったソリクア(インスリングラルギン+リキシセナチド)、ゾルトファイ(インスリンデグルデグ+リラグルチド)などがあります。
GLP-1受容体作動薬の注射頻度について
短時間作用型
ビクトーザ(リラグルチド):1日1回注射
バイエッタ(エキセナチド):1日2回朝夕食前
リキスミア(リキシセナチド):1日1回朝食前
長時間作用型
トルリシティ(デュラグルチド):週に1回決められた曜日に注射
マンジャロ(チルゼパチド):週に1回決められた曜日に注射
オゼンピック(セマグルチド):週に1回決められた曜日に注射
GLP-1受容体作動薬の内服方法について
リベルサス(セマグルチド):毎日起床時に120ml以下の水で内服し、服用後30分は絶飲食していただくことが重要です。リベルサスを空腹の状態で服用することで、胃から有効成分が吸収され、効果が発揮されます。そのためリベルサスの効果を発揮するためには、服用前後に胃の中を空っぽにしておくことが大切です。
マンジャロ(チルゼパチド):世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬
2型糖尿病ではGLP-1に対するインスリンの反応が障害されており、加えてGLP-1ホルモン分泌量の減少も関与していると考えられています。
また食後にはGLP-1とともにGIPというホルモンも同時に分泌され、それらはインスリンの分泌を増加させる働きがあります。ただしGIPはグルカゴン(血糖を上げるホルモン)に対しGLP-1とは違った働きをし、正常血糖や低血糖状態ではGIPはグルカゴンの働きを高めます。
上記薬剤の中でマンジャロ(チルゼパチド)はGIPおよびGLP-1受容体両方に作用します。GIP受容体の活性化により、GLP-1と同様にインスリン分泌をさらに増加させます。GLP-1作動薬による胃運動抑制作用はGIPでは見られず、嘔気症状も少ないことが言われています。また他のGLP-1製剤と同様に血糖降下作用があります。
GLP-1受容体作動薬の保険適応患者
- アテローム性動脈硬化症心血管疾患(以前の心筋梗塞)のある方
- 2型糖尿病の方
- HbA1cが高い方
- 肥満のある方
- 低血糖を起こしやすい方
- 慢性腎臓病(CKDのある方)←SGLT2阻害薬も有効です
※GLP-1作動薬は胃内容排出を遅らせます。そのため、胃の動きが悪い(胃不全麻痺)方は使用できません。胃腸症状(吐き気、嘔吐)を避けるために低用量で開始し、その後投与量を増量します。また膵炎がある方、1型糖尿病の方は使用できません。
GLP-1受容体作動薬の効果・効能
血糖降下作用
全てのGLP-1受容体作動薬はHbA1cの低下に非常に有効です。
体重減少効果
体重減少作用があります。理由としては、胃内容排出の遅延に対する GLP-1 の効果と、よく知られている副作用である吐き気と嘔吐によるものと考えられます。しかし、少なくとも長時間作用型の GLP-1 受容体作動薬では、胃内容排出の遅延は時間の経過とともに弱まり、これらの薬剤は脳の食欲中枢への効果を通じて満腹感を高めることで食欲減退をもたらします。
心血管への影響
ビクトーザ(リラグルチド)、オゼンピック(セマグルチド)、トルリシティ(デュラグルチド)は心血管リスクを低減します。それは単に血糖改善によるものだけではなく、GLP-1受容体作動薬の血圧やLDL(low-density lipoprotein)コレステロール、肥満といった高血糖以外の心血管リスクに関しても改善する効果が期待できるためと考えられています。2型糖尿病および心血管疾患(以前の心筋梗塞)がある方には、特に有効です。
腎臓への影響
ビクトーザ(リラグルチド)、オゼンピック(セマグルチド)、トルリシティ(デュラグルチド)は血清クレアチニン、尿中アルブミンの増加を抑制し、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があります。