むくみについて
手や脚、顔がむくむといった症状を経験されたことのある方は少なくないでしょう。こういった症状を医学的には「浮腫(ふしゅ)」といいます。
身体の組織や体腔内に余分な水分が蓄積する症状で、通常は体の一部が腫れたように見えます。むくみは体のさまざまな部位で発生し、特に四肢や顔などでその症状は目立ちます。
浮腫んだ場所を指で押さえると、圧痕がなかなか戻らない(圧痕性浮腫: pitting edema)といった症状を経験したことがあるかもしれません。特に重力の影響を受けやすい脚や足の甲はその症状が出やすいです。
むくみの原因について
①心臓疾患
心臓は全身に血液を送り届けるポンプの役割を担っています。
心筋症や弁膜症、不整脈などが原因で心不全になると血液の循環が悪くなるため、体液が体にうっ滞していきます。
また、腎臓に流れる血液量も減少するため、尿量が低下し水分が体内に貯留していきます。
その結果として体が浮腫み、体重の増加を来すのです。
②腎臓疾患
腎臓は体液と電解質のバランスを調整し、余分な物質や水分を尿として排泄する重要な役割を果たしています。
しかし腎不全になると、腎臓が正常に機能しないため体内の水分と塩分が適切に調整されず、余分な水分が体内に滞留し浮腫が生じます。
ネフローゼ症候群もその一種であり、尿中に蛋白が大量に漏出することで低アルブミン血症を来し、血管外に水分が漏出することで全身の浮腫が生じます。
③肝臓疾患
脂肪肝や肝炎、肝硬変など肝臓に障害が及ぶと、肝臓でのタンパク合成機能が低下します。
特にアルブミンは血漿中の主要なタンパク質で、血管内の水分を保持し浮腫を予防する役割があります。
しかし、肝不全となりアルブミンの合成が不十分になると、血管外の組織に水分が漏出しやすくなります。
その結果、体の組織や腹腔に水分が滞留し浮腫が発生します。
④内分泌疾患
甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの内分泌疾患に罹患すると、むくみやそれに伴う体重増加を来す可能性があります。
特に甲状腺機能低下症の場合、ムコ多糖類が皮下に溜まってむくみが生じます(粘液水腫)。
指で押しても痕が残らない(非圧痕性浮腫)が特徴的です。
⑤静脈疾患
静脈とは血液を心臓に戻す血管です。
下肢静脈瘤や静脈血栓症など静脈に障害が及ぶと、血液が効率的に心臓に戻ることが出来なくなるため、血液が滞留しむくみの原因となります。
また、静脈疾患が進行すると浮腫んだ場所で慢性炎症が生じ、それがさらに浮腫を増悪させる要因となります。
治療には静脈内手術、弾性ストッキングの着用、薬物療法などがあります。
⑥リンパ浮腫
リンパ液は、組織間の余分な液体、老廃物、および細胞の排泄物を運び出す役割を果たしています。
リンパ浮腫は、このリンパ液の適切な排出が阻害されるときに発生します。
例えば、事故や手術によるリンパ管の切除や損傷、感染症などがリンパ浮腫の原因となります。
また、悪性腫瘍がある場合、がん細胞によるリンパ管の圧迫もその要因です。
リンパ浮腫は治癒が難しく、一般的には慢性的な病態です。
治療にはリンパマッサージや圧縮バンデージ、運動療法、薬物療法などが含まれます。
⑦感染症
例えば、蜂窩織炎などの感染症が起こると炎症部位で血管拡張が生じ、血管の透過性も亢進します。
その結果、赤く腫れ熱感を持ち、浮腫が生じます。
感染症部位が浮腫むことは、体の自然な免疫応答の一部であり、病原体と戦うためのプロセスです。
⑧その他
長時間の立ち仕事や塩分過多、飲酒した次の日などでもむくみは生じます。
これらの浮腫は一般的に時間の経過とともに改善、消失していくものです。
また生理前や妊娠に伴う浮腫も、これもまた然りです。
むくみの診断(検査)
心電図
虚血性心筋症や不整脈などに伴う心不全の場合、脈の不整や波形の変化など心電図異常が指摘されます。
浮腫を訴えた場合、まずは心疾患を除外および同定する目的で心電図を撮られることがあります。
血液検査
血液検査は、浮腫を引き起こし得るあらゆる疾患に対して有効な検査となり得ます。
例えば、心不全の場合は脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の値が上昇したり、腎臓病の場合はクレアチニン(Cr)や尿素窒素(BUN)などの項目が上昇します。
甲状腺疾患では甲状腺ホルモンや刺激ホルモン(TSH, FT3,4)、静脈疾患など血栓形成を起こす疾患の場合はDダイマーの数値が上昇します。
画像検査
心不全や腎不全の場合、体液貯留に伴うむくみがひどいと、胸部レントゲンで胸水を認める場合があります。
また、胸腹部CT検査を行うことで、肝臓疾患の有無や腹水など、さらに正確に異常所見を見つけ出すことが可能となります。
経胸壁エコー(心エコー)
心臓の超音波検査で、心臓に器質的な異常がないか診断する上で非常に有効な検査となります。
また消化器疾患を疑う場合は、腹部エコーが有効です。
病気によって、疾患の同定に有効な検査は変わります。
診察の中で、ある程度鑑別診断を行いつつ、必要となる検査を決めていきます。
むくみの治療
原因となる疾患によって有効な治療法は変わってきます。
診察費用
当院はすべて保険診療です。診察費用は薬代を除き、およそ下記のようになっております(3割負担)